困難の今『フィンランドの幸せメソッド SISU(シス)』を思う
3月28日(土)放送の「世界一受けたい授業」で、フィンランドの”SISU”(シス)が紹介される。
▼世界幸福度ランキング2年連続1位のフィンランドってどんな国?
伝統的な考え方“SISU(シス)”とは?
仕事、育児、教育…幸せな理由を現地で調査!
あなたの未来が明るくなるヒントが見つかるかもしれません☆彡(「世界一受けたい授業」番組公式サイトより引用)
SISU(シス)というのは、フィンランド流の ”不屈の精神” のことだ。厳しい状況でも心折れず、困難に立ち向かっていく強さ、勇敢さ——。
私が『フィンランドの幸せメソッドSISU(シス)』という本を訳したのは2018年秋、今から1年半前になるのだが、今回テレビの話を聞いてやや久しぶりに、SISU(シス)という単語をキーボードで打った。
フィンランドは、最新の世界幸福度ランキングで、再び1位を獲得した。今のところ、「3年連続の1位」である。
・・・という話をしておいて、なんだが、
世界のどこにも、ユートピアなんてない。完璧な国なんてない。
これは、本の中で著者も書いていたことだし、私自身の考えでもある。
それでも、この本に私が惚れ込み、おりに触れて人に勧めたいと思う理由は、2つある。
1つは、この本は、単なるフィンランド解説本ではなく、著者のパーソナルな挑戦の物語でもあるということ。著者のカトヤ・パンツァルさんは、カナダからフィンランドへ移り住んだ女性。この本は、取材やデータを丁寧に折り込みつつも、彼女自身が人生の困難を乗り越える物語にもなっている。
だから、1ページ1ページに彼女が前に進もうとするポジティブなエネルギーが宿っていて、読み進めるうちに自然と勇気をもらえるのだ。
(↑アイススイミングを楽しむ著者カトヤ・パンツァルさん。)
そしてもう1つこの本の魅力は、実践的であるということ。彼女はこの本を、「フィンランド以外の、世界のどこに住んでいる読者でも実践できるように」書いてくれている。
実践的。これは私のごく個人的なこだわりであり、身勝手な指針なのだけど、講演などでフィンランドの素敵な面を紹介するとき、なるべく実践的な着地をさせたい、と思っている。海外についての話を聞いた人が、ただ「海外はいいですねー、はいはい」という気持ちだけで終わるものにはしたくないのだ。
フィンランド、というのはあくまで1つの参照点。だから考えるきっかけでしかなく、これを足がかりにして、「じゃあ、自分は今いる場所で、どうしたらよりハッピーでいられるのか?」と考えたり、1つでも何か具体的な行動につながったらいいな、と思っている。大切なのは、いかに生きるかって、ことだから。
その意味で、『フィンランドの幸せメソッドSISU(シス)』はまさに理想的な実用書だ。日本にいてもできること、今すぐできることがたくさん書かれている。
実際、私はこの本に既に2度も人生を助けられてしまった。1度目はちょうど翻訳をしていた頃、2度目は、つい最近のこと。
得体の知れない壁に目の前が真っ暗になったり、忍耐を要する状況に追い込まれたりしたとき。私はいつも、この本に書かれていた著者の言葉を、おまじないのように頭の中で繰り返し、大切な花束のように、胸に抱いた。
私がやっかいな病を乗り越えようとしたとき。同じように、何度も困難を乗り越えてきた著者の姿が、私のそばにあるような気がした。
そばにいるのは著者だけではない。この本は世界に広く翻訳されていて、世界のどこかには、今まさに、何かを乗り越えようとしたり、より良く生きようと立ち向かっている人がいるはずなのだ。
私は、ひとりじゃない。本を介して、想像力を介して、私たちはつながっているんだと思う。
翻訳してどれだけ時間がたっても、私の心の中には、この本の気配がある。暗がりの中でもいつも微かに感じられる、灯火のように。
そしてまた、私以外の誰か、この本を必要とする人が、必要なタイミングで、本に手を伸ばすことができますように・・・。
この本が、必要としてくれる人のそばにちゃんとありますように。誰かが手を伸ばしてくれるその瞬間のために、一生懸命でいたいなと、思っている。
気候変動から政情不安、金融不安まで、この不安定な世界では心配事が絶えませんが、「シス」のマインドセットを使えば、前に進む道筋はきっと見つかります。内なる強さとレジリエンス(立ち直る力)が、困難に立ち向かうあなたを助けてくれます。
(中略)
ピンチに陥った時、たとえどんなに不安で動揺していても、私は内に意識を集中させ、「シス」をかき集めます。そして、次に何をすべきか、誰に助けを求めるべきか、どう対処するのがベストか、答えを導き出します。
(中略)
どうか、次のことを心に刻んでおいてください。究極の強さは、自主と自立に宿る、と。つまり大切なのは、あなたが、自分の手で、自分だけの「シス」の物語を紡いでいくことなのです。
——『フィンランドの幸せメソッドSISU(シス)』(カトヤ・パンツァル著/柳澤はるか訳/方丈社 より)
2020年3月25日
「世界一受けたい授業」でフィンランドのSISUが取り上げられ、SISUを紹介した『フィンランドの幸せメソッド SISU』 が、各ネット書店では売り切れておりますが、弊社に在庫は潤沢にございますので、近日中には在庫が復活するはずです。もうしばらくお待ちください。 https://t.co/YW4x2RmqT9
— 方丈社 (@hojosha) March 30, 2020